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【導入】

そこは、穢れることを知らないと思わせるほどに真っ白な部屋だった。

5つの扉と、モニターが付いた大きな装置があるだけで、他には何もないこの簡素な部屋で、5人の男女は目を覚ました。

起き上がり、顔を見合わせた彼らに面識はなく、誰一人としてここにいる状況を理解できずにいた。何故なら誰も、ここに来るまでの記憶を持ち合わせていなかったからだ。

 

慎一:「おい、誰かいないのか。いるなら返事をしてくれ!」

悟:「扉も開かないぞ! どうなってやがるんだ!」

沙織:「みんな落ち着いて、冷静になって。出る方法はきっとあるから」

愛衣:「いやいや、こんな状況で落ち着いてられないでしょ!」

???:「・・・・・」

 

こんな非日常的な空間で目覚めることはフィクションではよくある展開だ。だからこそ、彼らは数分の間、変化を待ち続けた。しかし、現実は残酷なものだった。静寂だけが支配するこの部屋で、彼らは動揺を隠すことができない。

悲痛の叫びが鳴り止まない状況で、ある変化が一瞬にしてこの部屋に静寂を取り戻させた。それは、授業の開始を知らせてくれるあの音だった。

 

――――ピーンポンパーンポン

 

素っ頓狂な音とともに、この部屋にも変化がもたらされる。それは、大きな装置に付属したモニターが光を放った。そして、何の前触れもなくアナウンスは流れた。

 

『これより、皆様にはこの部屋から脱出してもらいます。方法はモニターに映し出されますので、確認をお願い致します』

 

そこに映し出された条件は、あまり残酷なものだった。

脱出条件。それは大きな装置から開口一番に発せられた言葉だった。モニターに映し出された条件は以下の通りだった。

 

1.皆で協力し、出口を見つけること

追記:説明後、5つの扉。皆に用意された部屋が解錠される。そこに脱出のヒントが隠され

   ている。

2.自分以外の誰かを殺害すること

追記:どのような手段でも構いませんが、自分以外の人物を殺害することで、特典とともに

   殺人を犯した一名は脱出可能となります。

   ですが、死体が発見された時点で、皆様には犯人が誰なのかを議論してもらいます。

   そこで犯人を無事指名できた場合、犯人にはその場で処刑が行われます。出来なかっ

   た場合は上記の内容と同様、犯人は脱出可能となり、他の者は処刑されます。

特典:一つだけ、どんな願いでも叶える権利を差し上げます。不可能はありませんので、

   死人の蘇生、囚人の解放などの常識を超えた願いも承ります。

 

『皆様には各々部屋を用意しております。脱出のヒントとなるものがあるやもしれませんので、どうぞご自由にお使いください。では、時間になりましたら、再度アナウンスを行いますので、それまでご自由に行動ください』

 

そこでアナウンスとともに、装置の電源も落ちた。慎一が確認のため、装置に触れると起動した。どうやら、完全には落ちていないようだ。

 

「とりあえず、各々の部屋があるんだから、何か脱出の手がかりになる物がないか探してみないか。その後で、各々自己紹介するって感じでいいかな?」

 

「賛成!それでいいと思う」

 

慎一の提案に、沙織だけは大きく手をあげて発言したが、他の3人は黙って自分の名前が書かれた部屋へと向かって行った。みんな揃って脱出する、それが全員の総意と信じて。

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